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【国文学卒が選ぶ】結末が意外!感動する本おすすめ5選【初心者向け 子どもの読書感想文にも】

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モキュママ
結末が意外な小説って面白いわよね。

モキュたろうはどんな小説が読んでみたい?

グッとくる小説が読んでみたいモキュ!
おすすめを教えてほしいモキュ!
モキュたろう
モキュママ
じゃあ、国文学卒の私が教えてあげるね!

私が紹介します

  • 同志社大学文学部国文学科卒
  • 年間読書量100冊
  • ”何気ない日常から非日常が起きたときの人情の機微”が描かれているという視点から5つ厳選

はじめに

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今回紹介する作品は、私が今まで読んできた本の中で、 「結末が意外」「一生胸に残る」と自信を持って言えるものです。

これを読めば人生が豊かになること間違いなし!

こんな本を紹介します

  • 読書初心者でもとっつきやすい
  • 感動的で心にジンとくる
  • 意外な結末が待っており、人生の刺激となる
  • 小学校高学年から大人まで幅広く楽しめる
  • 子どもの読書感想文の本選びに参考になる
モキュママ
では、早速みていきましょう!

結末が意外!感動する小説 おすすめ5選

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紹介するのはこの5つの作品。

  1. 森 絵都『カラフル』
  2. 瀬尾 まいこ『幸福な食卓』
  3. 梨木 香歩『西の魔女が死んだ』
  4. 北村 薫『スキップ』
  5. 太宰 治『斜陽』
モキュママ
あらすじとおすすめポイントを、印象に残った文章の引用を交えて紹介します!

①森 絵都『カラフル』

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あらすじ

死んだはずのぼくの魂は、「小林誠」としてもう一度生きるチャンスを与えられる。
しかし自殺未遂を図った中学生の「小林誠」は、チビで友達がひとりもいない、冴えないヤツだった。
なんでこんなヤツとして生き返らなきゃいけないのか?
そしてぼくの使命は、前世で犯した自分の過ちに気づくことだという。
そんなぼくが、クラスメイトの早乙女くん、密かに憧れを抱くが援助交際をしているひろか、同じ美術部で陰キャラ・唱子との関わりで何かが変わっていく――。

この作品の印象深いシーンは、こちら。

みんな、いろんな絵の具を持っている

放課後の美術室。天真爛漫なはずのひろかが、「真くんのこの絵、好き」と話していた青い絵を前に、黒の油絵の具を握りしめてたたずんでいる。

うそだろう、なんでひろかがぼくの絵を?と思ったが、気がつくとぼくはささやいていた。「いいよ。その絵、ひろかにやる」
ひろかは、突然大粒の涙を流しこう言う。

「ひろか、きれいなものが好きなのに、すごい好きなのに、でもときどきこわしたくなる。ひろかの手でぐちゃぐちゃにこわしたくなる。おかしいの、ひろか、おかしいの」
ぼくはひろかに歩みより、ふるえる肩に手をかけた。
「そういうことって、あるよ。ひろかだけじゃない」……
「うんとやさしいひろかと、うんと意地悪なひろかがいるの」
「みんなそうだよ。いろんな絵の具を持ってるんだ、きれいな色も、汚い色も」
ひろかの持ってる明るい色が、真の暗い日々をいつも照らしていたんだぞ。そう教えてやれないのが残念だった。
人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。
この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。
どれがほんとの色だかわからなくて。
どれが自分の色だかわからなくて。
「三日にいちどはエッチしたいけど、一週間にいちどは尼寺に入りたくなるの。十日にいちどは新しい服を買って、二十日にいちどはアクセサリーもほしい。牛肉は毎日食べたいし、ほんとは長生きしたいけど、一日おきに死にたくなるの。ひろか、ほんとにへんじゃない?」
不安げに念を押すひろかに、
「ぜんぜんふつう。平凡すぎるくらいだよ」
ぼくは強く言いきり、小声でつけたした。
「でも、死ぬのだけはやめたほうがいい」

この本は、思わず「わかるわかる!」と言いたくなる、言葉では説明できない思春期独特の心理描写を、率直な文体で見事に描いています。

モキュママ
はじめて読んだのは中学2年生ですが、
大人になってからも何度も読み返したくなる傑作です。

ここに注目

ぼくとは一体誰なのか?前世で犯したぼくの罪とは?

衝撃のラスト、どんでん返しから目が離せません。

作者のプロフィール

森 絵都(もり えと)
1968年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。
第46回産経児童出版文化賞を受賞した『カラフル』と、
第52回小学館児童出版文化賞を受賞した『DIVE!!』は映画化とアニメ化もされ、話題になる。
2006年、『風に舞いあがるビニールシート』で第135回直木賞受賞。
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②瀬尾 まいこ『幸福な食卓』

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あらすじ

父さんが自殺を失敗したときも、母さんが家を出たときも、朝は普通にやってきた。あの日、恋人を失ったときも…。
中原 佐和子、高校1年生。父が数年前に自殺未遂を犯したという事実がありながら、佐和子一家はそれなりに仲良く、平和に暮らしていた。
しかし、佐和子は恋人の大浦君を不慮の事故で亡くしてしまうのである――。

この作品の印象深いシーンは、こちら。

佐和子を救ったのは兄の彼女

大浦君を亡くし、悲しみにくれる佐和子は食卓でついこう漏らしてしまいます。

「変だよね。
父さんはさ、死にたかったのに、失敗してずっと生きてる。
だけど大浦君は死にたくなんかなかったのに、死んじゃうんだもん。
死にたい人が死ななくて、死にたくない人が死んじゃうなんて、おかしいよ。
そんなの不公平だよ」

言ってからしまったと思う佐和子。
しかし兄は彼女を責めることなく、包み込むようにこう言います。

「かわいそうに。
そういうこと言うほど佐和子は傷ついてるんだね。」

ふさぎ込む毎日を送る佐和子。
そんな中、「派手で嫌な女」な兄の彼女、ヨシコが強引に佐和子の部屋に突入してきます。
そして言いにくそうに、こう言います。

「あのさ、言葉悪いけどさ、恋人はいくらでもできるよ。
もちろん、今、そんなこと言うの最悪だってわかってる。
でもね、そうだよ。恋人も友達も何とかなるよ。
あんたの努力しだいで。
あんたさ、すごいいい子だもん。
いや、まじでそう思ってるよ。
だから大丈夫。
絶対、また恋人はできる。
私が保証してあげる。っていうか、もし、できなかったら、私が探してきてもいいし。
でも、家族はそういうわけにはいかないでしょう?
お兄ちゃんの代わりもお父さんの代わりもあんたの力ではどうすることもできないじゃん」
「だから大事にしろってこと?」
「まあね。もっと大事にしろって思うし、もっと甘えたらいいのにって思うよ」

一見ほのぼのとした話かと思いきや、平凡な毎日の中でちくりと人間の弱さを浮き彫りにする出来事を描いています。

そしてどこかくすっと笑える文体と、ちょっとおかしな家族や恋人との会話が印象的です。

モキュママ
読後はじんと心が温かくなります。

ここに注目

清く正しく生きていても、何気ない日常の中で不幸は起こってしまう。でもそれが「人生」なのかもしれない、そう感じさせる作品です。

作者のプロフィール

瀬尾 まいこ(せお まいこ)
1974年、大阪府生まれ。大谷女子大学国文科卒。
中学校で国語教諭として勤務する傍ら執筆活動を行う。
2001年『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞大賞を受賞。
2005年『幸福な食卓』で第26回吉川英治文学新人賞、2007年に映画化。
2018年『そして、バトンは渡された』で第16回本屋大賞受賞。
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③梨木 香歩『西の魔女が死んだ』

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あらすじ

感受性が豊かなゆえに、突然学校に行けなくなってしまった少女まい。
しかし、西の魔女ことおばあちゃんのもとで魔女の手ほどきを受けるうち、自然とのびのびとした感覚を取り戻していく。
そして、魔女修行でいちばん大事なことは「なんでも自分で決める」ことだった。喜びも希望も、もちろん、幸せも……。

まいのおばあちゃんは、日本語を流暢に話すイギリス人で、魔女。
魔女といっても、箒に乗るようなアニメのような魔女ではありません。

おばあちゃんの先祖は、代々語り伝えられてきた知恵や知識を豊富に持っており、のちに予知能力や透視といった特殊な能力を持つ者が現れたのです。

合言葉を言えないまま生き別れ

ある晩、まいはおばあちゃんと一緒に眠りたいと言いました。

「おばあちゃん」
まいは低い声で呼びかけた。
「なあに」
おばあちゃんも低い声で返事をした。
「人は死んだらどうなるの」
それを聞いて、おばあちゃんは声にならない唸り声のようなものを出した。それからため息と共に、
「分かりません。実を言うと、死んだことがないので」
まいは張りつめていた緊張が、変な緩み方をしたように思った。そして何だか急におかしくなって、そんなつもりはなかったのに吹き出してしまった。
「もう、おばあちゃんたら」
おばあちゃんも笑いながら、
「でも、自分の死はまだですけれど、おじいちゃんの死は体験しましたし、魔女トレーニングは受けましたから、ある程度の知識はあります。それに、この歳になりますと、死後のことを射程に入れて生きるようになりますから」

そして、まいはパパにも「人は死んだらどうなるの?」と問うたことを告白します。

「パパは、死んだら、もう最後も最後なんだって言った。もう何もわからなくなって自分というものもなくなるんだって言った。もうなんにもなくなるんだって言った。でも、わたしが死んでも、やっぱり朝になったら太陽が出て、みんなは普通の生活を続けるのってきいたら、そうだよって言った」
もう、最後のところはしゃくりあげていた。
おばあちゃんは黙って聞いていたが、布団の端を上げて、
「まい、こっちにおいで」
と、優しく言った。
まいは、しゃくりあげながらおばあちゃんの布団の中に入った。おばあちゃんはまいの背中をなでながら、
「それでは、まいはずっとつらかったね」
と言った。まいは、返事の代わりにまたひとしきり声をあげて泣いた。

次の朝、おばあちゃんはまいにこんな約束をしてくれます。

「おばあちゃんが死んだら、まいに知らせてあげますよ」……

「まいを怖がらせない方法を選んで、本当に魂が身体から離れましたよって、証拠を見せるだけにしましょうね」

ところがとある出来事が原因で、まいはおばあちゃんとケンカ別れをしてしまいます。

口癖のように言っていた「おばあちゃん、大好き」を一生、言えないまま…。

訃報を聞き駆けつけたまいは、おばあちゃんが「とある形」であの時交わした約束を果たしてくれたこと気づきます。それは――。

丁寧に生きること

自然と丁寧に生きる、おばあちゃんとまいのスローライフが魅力的に描かれます。

野いちごでジャムを作ったり、庭で育てたミントで紅茶を淹れたり、ラベンダーの茂みに広げたシーツに香りを焚き染めたり。

モキュママ
おばあちゃんの「毎日変化する庭の変化を楽しむ」
「折り目正しく生きる姿」にも注目です。

ここに注目

死ぬってどういうこと?感受性豊かな少女まいに、西の魔女ことおばあちゃんが最後に残したメッセージとは?
ラストの1ページに涙が止まりません。

作者のプロフィール

梨木 香歩(なしき かほ)
1959年、鹿児島県生まれ。同志社大学卒業。
学生時代、イギリスに留学し児童文学者のベティ・モーガン・ボーエンに師事。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、第44回小学館文学賞受賞。2008年6月に映画化。
『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞。
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④北村 薫『スキップ』

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あらすじ

昭和40年代の初め。17歳の一ノ瀬真理子は、体育祭が雨で中止になり家で一眠りしていた。
目覚めると、25年の月日が過ぎていた。桜木真理子、42歳。夫と17歳の娘がいるという。目尻には烏の足跡、横から見るとDの字のように出たお腹。轢かれそうになった、若いドライバーの男には「婆あっ!」と怒鳴られる。
でも、決して泣かなかった。泣くものか。
「一ノ瀬眼科」は、わたしの育った家は、煙のように消えていた。父と母は死んでいた。むごい、と思った。
それだけではない。私の職業は、高校の国語教師だという。
これからどうするのか?右も左も分からない。戸惑うことばかり。ひとりぼっちだ―――。

これは、タイムスリップならぬタイムスキップするストーリーです。

歯を食いしばろうと立ち向かう美しい強さ

妻と同じく国語教師の夫は、戸惑いつつも「時間を越えてきた」妻を支えます。
17歳の一ノ瀬真理子は、夫の指導のもと、一生懸命予習をし、時にヒヤリとしながらも、42歳の「桜木真理子先生」を見事にやってのけます。
真面目に、懸命に、真摯に、誠実に現実と向き合い、努力します。

真理子は、生徒に「先生の好きな言葉は?」と問われ、こう答えます。
「自尊心」。
「十七歳のわたしが忘れたくない言葉だった。生意気で、もろくて、そして切ない言葉だと思う。」
それでも「顔を上げて歩きたい」というのです。

モキュママ
「時間」という運命にはめられようと、まっすぐに生き生きと、
凛とした美しい強さをもった女性を描いています。

タイムスリップ?記憶喪失?それとも…

「桜木先生」も軌道に乗ってきた頃、文化祭がはじまります。
いよいよです。タイムスリップした時のシチュエーションと似ています。

モキュママ
さあ、いつ、42歳の真理子は17歳の真理子にもどるのでしょうか?

しかし残念ながら、真理子は17歳の自分の時代に戻りません。
そもそも、真理子は本当にタイムスリップをしたのでしょうか?

こんなシーンがあります。
娘の美也子に、「今まで持ち出し可」だったという母の本について、「今まで通りに、自由に本を借りていい?」と聞かれます。
真理子は、こう答えます。

「いいわよ、勿論」
その言葉が唇からもれた瞬間、わたしの体の芯を、どうしようもなくせつないものが、流れ落ちるように素早く走り抜けた。

「どうしようもなくせつないもの」とはなんでしょうか?
真理子は、悟ったのではないでしょうか。
自分はすでに「42歳」であることを。

もうひとつ。新田君という成績優秀、容姿端麗な生徒に「好きです」と告白されるシーン。
42歳の彼女はこう答えます。

「若いから――若いから、それだけ真剣になれるのね」
わたしもそうだ、わたしも。……
「いくらあなたが、わたしを好きでも、わたしが江戸時代の人間だったら、どうすることも出来ないでしょう。それと同じことよ。そのずれが、もうちょっと小さく起こったの」
「……」……
「――愛してちょうだい。好きになってちょうだい。ありがとうというわ。でも、でも――手をつなぐことは出来ない」

モキュママ
なるほど、42歳の受け答えである、17歳の女子高生には答えられまい…そう思うのは私だけでしょうか。

最後に、文化祭の最後のフォークダンスに参加するシーン。

「先生、踊るんですかっ」
「そうよ。わたしも、ずっと昔は高校生だったのよ。――ずっと昔は」……
今、わたしの心は十七に返り、ただ一度のオクラホマミキサーを踊る。

心は最初から17歳ではなかったのでしょうか?

自然と42歳に戻っていったのでしょうか?

実ははじめから42歳だった、タイムスリップではなかった、とも言えるのではないでしょうか。

モキュママ
では、なんなのか? 真理子は、記憶喪失なのでしょうか?

しかし、真理子が、「二十五年前から、ここまで飛んできてしまった」ことは事実です。

娘の美也子は、母が時間を越えてきたことを、はじめはどうしても信じられませんでした。
しかし、毎日母の様子を見て、こう思ったと告げます。

「ひょっとしたら、そういうことも――時間の針がおかしくなることも、あるのかしれない。…わたし、自分があなたに重なって行くような気になったの。…そうなんだって分かったの。分かっちゃったのよ」

娘の美也子は、こう続けます。

「――大昔にね、神隠しとかいうのがあったじゃない。あれって、こういうような時間のねじれなんじゃないかな」

なんとも、複雑になってきました。

17歳の自分には戻らない

時間のいたずらが生み出した複雑さは、切なさをも生み出してしまいます。

印象的なのは、42歳の池ちゃんと再会したシーン。
どこかで小さい子供が母親を呼ぶ泣き声が聞こえ、親友の池ちゃんはこう話し出します。

「妙なものね。うちの子、もう中学生なんだ。それなのに、ああいう声聞くと、ふっと――自分が呼ばれてるような気がする」
そこで、池ちゃんは絶句し、わたしの顔を見つめ、押し殺したような声で続けた。
「……どうしたの」
涙が溢れた。止まらなかった。あの日から、何があろうと、一度として流したことのなかった涙が。
「――分からない。わたしには、そういう気持ちが分からない」
そう口にした瞬間、自分が失ったものは二度とこの手に戻らないと悟った。時の欠落は埋めることなど出来ない。だからこそ人間なのだ。再び、十七の時に戻ることなどあり得ない。わたしは、その大きな矢に刺し貫かれた。
お父さん、お母さん、わたしはもう二度とあなた方に会えません。掘られた溝は、あまりにも深いのです。会えるとするなら、いつか、生を越えたとき。
――その日まで待っていて下さいね。

この時はじめて、真理子は涙を流します。
「自分はもう一生、17歳の時代に戻れないのだ」と確信した切なさゆえに……。

『スキップ』は、簡単にいうとタイムスリップの話と思われるでしょう。
しかし、実際はそのような単純な話ではありません。
これは、「前いた世界に戻ってこない」お話なのです。

モキュママ
その複雑さこそが、『スキップ』の面白さです。

ここに注目

まさかの「前いた世界」に戻ってこない?これは単なるタイムスリップの話ではありません。真理子は「記憶喪失」なのか?結末に議論が分かれるところです。

作者のプロフィール

北村 薫(きたむらかおる)
1949年、埼玉県生まれ。早稲田大学ではミステリ・クラブに所属。
高校教師を勤める傍ら、1989年に覆面作家として『空飛ぶ馬』でデビュー。
1991年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。
2009年『鷺と雪』で第141回直木賞を受賞。
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  • 北村 薫の《時と人》三部作

こちらもおすすめ。続編ではなく、すべて独立した話です。

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⑤太宰 治『斜陽』

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実は、私が国文学を学びたいと思ったきっかけの本は『斜陽』です。

モキュママ
皆さんは「太宰治」と聞いてどんなイメージをしますか?
「難しそう」「暗くて女々しい」と思っていませんか?

その答えはノーです。
なぜなら、太宰の作品は、読者を惹き付けるストーリーですらすらと読みやすく、結末は明るく希望に満ちているからです

この『斜陽』は、その事実を裏付ける作品です。
その理由を説明していきますね。

あらすじ

舞台は戦後。没落貴族の女性、かず子は離婚と死産を経験した29歳の出戻り娘。
お父上を亡くしてからも、お母さまと華麗で優美な生活を続けていたが、家を売らなければならないほど、日に日に貧乏になっていく。
やがて、「最後の貴婦人」である最愛のお母さまは病死。「庶民になりきれなかった」弟の直治は麻薬と酒に溺れ、自殺。
その後、かず子は子持ちの既婚者である、飲んだくれの醜男・洋画家の上原に恋をする。
やがて彼の子を身ごもり、母子で強く生きていくことを高らかに宣言する。

注目すべきは、お母さまと「ままごと遊びみたいな暮し方」をしていたかず子が、母と弟の死後、「恋と革命」の成就のために人間らしく逞しくなっていく姿です。

「人間は、恋と革命のために生れて来たのだ」

「いつまでも、悲しみに沈んでもおられなかった」かず子は、手紙の返事のない上原を訪ねて、一人で東京へ旅立ちます。

戦闘、開始、恋する、すき、こがれる、本当に恋する、本当にすき、本当にこがれる、恋いしいのだから仕様が無い、すきなのだから仕様が無い、こがれているのだから仕様が無い、あの奥さまはたしかに珍らしくいいお方、あのお嬢さんもお綺麗だ、けれども私は、神の審判の台に立たされたって、少しも自分をやましいとは思わぬ、人間は、恋と革命のために生れて来たのだ、神も罰し給う筈が無い、私はみじんも悪くない、本当にすきなのだから大威張り、あのひとに一目お逢いするまで、二晩でも三晩でも野宿しても、必ず。

「人間は、恋と革命のために生れて来たのだ」という言葉に、かず子がまるで生まれ変わったかのような「強さ」を感じさせます。

物語のラストでは、弟・直治の遺書で直治が「上原の妻に恋をしていた」という事実が明らかになります。

姉さん。
僕に、一つ、秘密があるんです。
永いこと、秘めに秘めて、戦地にいても、そのひとの事を思いつめて、そのひとの夢を見て、目がさめて、泣きべそをかいた事も幾度あったか知れません。…
そのひとは、戦後あたらしいタッチの画をつぎつぎと発表して急に有名になった或る中年の洋画家の奥さんで、その洋画家の行いは、たいへん乱暴ですさんだものなのに、その奥さんは平気を装って、いつも優しく微笑んで暮しているのです。…
姉さん。
死ぬ前に、たった一度だけ書かせて下さい。
……スガちゃん。その奥さんの名前です。 ………
夜が明けて来ました。永いこと苦労をおかけしました。
さようなら。
ゆうべのお酒の酔いは、すっかり醒めています。僕は、素面で死ぬんです。
もういちど、さようなら。
姉さん。
僕は、貴族です。

この事実は、物語の最後に大きく関わってきます。

自らシングルマザーとなるかず子

最後に上原にあてた手紙の中で、かず子はこう宣言します。

こいしいひとの子を生み、育てる事が、私の道徳革命の完成なのでございます。
あなたが私をお忘れになっても、また、あなたが、お酒でいのちをお無くしになっても、私は私の革命の完成のために、丈夫で生きて行けそうです。…
私生児と、その母。
けれども私たちは、古い道徳とどこまでも争い、太陽のように生きるつもりです。

こんなにも強く、生命力あふれる女性がいるでしょうか?
母子でたくましく生きていくこと。
そこにはもはや「暗さ」「女々しさ」はありません。

モキュママ
希望に満ちあふれており、時代の新しささえ感じさせます。

物語は、上原への手紙の「一つだけ、おゆるしをお願いしたい事」で締めくくられます。

私の生れた子を、たったいちどでよろしゅうございますから、あなたの奥さまに抱かせていただきたいのです。そうして、その時、私にこう言わせていただきます。
「これは、直治が、或る女のひとに内緒に生ませた子ですの。」
なぜ、そうするのか、それだけはどなたにも申し上げられません。いいえ、私自身にも、なぜそうさせていただきたいのか、よくわかっていないのです。でも、私は、どうしても、そうさせていただかなければならないのです。直治というあの小さい犠牲者のために、どうしても、そうさせていただかなければならないのです。
ご不快でしょうか。ご不快でも、しのんでいただきます。これが捨てられ、忘れかけられた女の唯一の幽かないやがらせと思召し、ぜひお聞きいれのほど願います。

そこには、もう貴族であったかず子はどこにもいません。
きっとかず子は、シングルマザーとして、苦労しながらも輝き懸命に生きていくことでしょう。

いかがでしょうか?
ここまで読んで「読みづらい」「暗い」と思われるでしょうか?
この時代に、このような女性を描いていることが新鮮に思われます。

モキュママ
太宰の女性目線にも注目です。

ここに注目

戦後、ひたむきに生き抜く没落貴族のかず子を、女性目線でドラマチックに描いています。
数々の不幸がありながら、希望に満ち溢れたラストに心奪われます。

作者のプロフィール

太宰 治(だざい おさむ)
1909年青森県生まれ。東京大学仏文科中退。
左翼活動での挫折後、自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながら、第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を次々に発表。没落した華族の女性を主人公にした『斜陽』はベストセラーとなるが、『人間失格』を残し、1948年に入水自殺。
主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』など。

おわりに

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今回は、「結末が意外」「一生胸に残る」本を5つ紹介しました。

読書の良いところは、「読むその時その時」によって感想が変わるところですよね。

今回紹介した作品はすべて、子どもから大人まで楽しめる傑作です。

モキュママ
ぜひ、読書でおうちタイムを楽しく過ごしてくださいね。




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